パレスチナ自治区ガザ・・と、『中西繁・展』 |
昨年の9月、山形市「文翔館」で行われた『中西繁・展』を訪れ、心動かされた私の記憶だ。
(上:パンフレットから)
彼は62歳、私と同じ建築設計の仕事に長年携わりながら、地震などの災害や戦争による殺戮と破壊によって壊されていく都市の景観に大きく“こころ”動かされ、その後世界を旅しながらそんな廃墟などを絵にしたためてきた、そんな一人の画家の作品展だった。
・・・特に、阪神大震災をきっかけにして人類の歩む道筋に大きな疑問を感じました。
それは産業の変遷・文明の発展の中に、矛盾した荒廃が進み、そして戦争という最大の破壊行為や大災害によって荒廃が一騎に進むと言うことです。
この度の四川大地震では計り知れない人命が失われ、広大な町や村が消滅しました。この悲しみと困難をどう乗り越えればいいのでしょうか?。途方も無い試練を人類が課せられているとしか言いようがありません。アフリカの飢餓、パレスチナの紛争、米国によるイラク戦争など人類の英知は合理的な解決どころか、ますます高度で大規模な殺戮と破壊を繰返しているのです。時として諦めと絶望がもたげてきます。しかし、草の根から平和の希求と、豊かで美しい生活への努力を、人間本来の智恵で進めなければならないとも思いなおします。・・・・・・
中西繁:パンフレットから
長崎県長崎市(旧高島町)にある・・通称軍艦島(写真はネットから)。かつては炭鉱が存在し、その外観からそう呼ばれるようになったという廃墟となった島。廃墟化した建物が持つ特有の魅力がそこにはあり、最近は、船に乗って軍艦島をツアーする企画さえ存在する。この島には計り知れないドラマがあっただろう、そんな人達の生活の跡が風化していく様。
そこに切なさや哀れさや親しみを感じながらも「愛おしさ」のようなものが、見るものを引き付けて止まない。
それとは別に、ここのところ連日報道される、イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの殺戮と破壊行為により、死に行くたくさんの子供たちや、爆撃により破壊された廃墟を前に、中西繁の言う、・・・豊かで美しい生活への努力を、人間本来の“智恵”で進めなければならない・・その難しさと、勿論自分も含め人間のどうしようもない矛盾を痛感する。
(左:今日の朝日新聞)
様々な廃墟の裏に潜む“ひと”の営みと、そこには“涙”や“血”や、“人間”の深い生き様が投影され、虚しささえも伝わってくる。
そんな廃墟とは、・・・良くも悪しくも、言葉でもない、見るものにある時は“畏怖”を感じさせながらも、目に見えない“何か”を、後世に強く伝えようとしているのかもしれない。