“得とくした呼吸法” |
大鳥居のある登山口に向って歩いていると、その道路のそばで融け行く雪の隙間から“ふきのとう”が見えた(写真)。頼り無げなその黄色に近い緑の色も、土に返ろうとしている堆積した枯れ葉を背景に、より鮮やかに見え、春の息吹を感じさせる。最近の陽気で、登山道に残っていた雪もすっかり融け、山頂に僅かに残るだけとなった。私は、アイゼンを装着した深長靴をスニーカーに変え、そして滑落防止のストックも不要となった。冬を越え、千歳山の登山客も日増しに戻り出し、昨日はたくさんの人と挨拶を交わした。
右足をかばいながら、人の何倍も遅くゆっくりと・・しかも坦々と登り続け登頂を果す・・何時ものあのおじさんと久しぶりに挨拶を交わし、私はどこかほっとするような嬉しい気持になった。(左)
そんな春の日差しの中、トツ・・トツ・・トツ・・トツ・・・・自分の足音のリズムに合わせ・・ハー・フー・ハー・フー・・・と、呼吸を繰返しながら先日、何時もの様に千歳山の山頂を目指した。昨年の春から、大井沢登山の練習として始めたこの千歳山登山も・・早1年が経とうとしている。
何時からだろうか、登山を繰返しているうちに、登山道の変化のある傾斜にも、足のスピードと呼吸のリズムを変えることなく坦々と登れるようになった。以前は、一度も休まずに山頂にたどり着くのがほぼ限界だった私ですが、こころところ1度も息を切らすこともなく、もしかすると延々と登り続けられるのではないか?・・などと思えるほどに体力が付いた・・・いや、自分に合った呼吸法が身に付いたのかもしれない。
人間の体の順応性に驚く。
晴天ながら風が強かった先日、私の頭上で風に揺れる木々は唸りをあげ、サワサワ~・ザザ・・ザーと、まるで打ち寄せる波の音のように聞こえた。又、木の枝に残った枯れ葉がこすれあい、まるで小さな無数の鈴の音を聞いているかのごとく聞こえ・・・私は、そんな自分の頭上の懐かしい“おと”を楽しみながら、ようやく春を迎えるのだと実感した。