千歳山に・・又あの “いつものおじさん” |
それもそのはず、彼は、右足をかばうように・・一歩・・そして又一歩と、ひたすら自分の足元だけを見詰め、足の動きを確かめるかのように、それはそれは黙々と登り続けるのだった。年齢は・・・65歳位だろうか、その右足が少しだけ不自由になってしまったのは何故なのか・・は、勿論わからないが、たとえ彼にとってこの登山が右足の“リハビリ”なのだとしても、私には、この平凡な登山道でさえ彼にはとても過酷に見えた。いったいどこまで登るつもりなのだろうか・・・?、この状態では多分彼は山頂まではたどり着けないだろうと、その時私は、当然ながらそう思っていた。(写真は、先日のいつものおじさん。)
その後、なんとか山頂にたどり着いた私は、展望台から山形の町並みを俯瞰で眺めながら、汗も徐々に乾き始め切らした息もようやく整えることが出来た。今度は気持を切り替え、緑豊かで爽やかな自然を楽しんでやろうと、軽快に下山を始めた。そして、私が六合目あたりまで降りた頃だろうか、先ほど追い抜いた、右足をかばいながら登り続けるあのおじさんがいまだに登り続けている姿が見えるではないか。・・・私は思わずすれ違いざまに、「先ほどは・・・!、頑張ってください!」・・などと、今考えれば失礼な言葉だったような気もするが、「あぁ~・・・!。」と、彼は足元を見詰めるその視線を変えることもなく、又同じペースで登っていった。私は、日没までにはまだまだ時間があるのだから、どんなに時間が掛かろうとも、彼が爽快なあの山頂に・・どうか無事にたどり着けますようにと、その時私は、心から祈らずにいられなかった。マイペースで、何時間かかっても山頂まで登りつめようとする彼の“こころ”の強さを感じながら、この日、私は、久しぶりにこみ上げてくる爽やかな感動を味わっていた。
(千歳山で真冬に出会った時の”いつものおじさん”。彼とすれ違いながらその元気さを見届けるように、私はいつも、つい振り返ってしまうようだ。)
そして、あれから約一年、あの千歳山の登山道で、もうどのくらい出会っただろうか、顔なじみとなった私とあのおじさんは、たまに山頂で出会うこともあった。
ひょっとすると、彼は毎日登頂を果しているのだろうか?、でも、その右足をかばいながら登るその足取りは、以前とあまり変わらないような気がする。
先日も、「こんにちは・・!。」と私が声を掛けると、おじさんが又もいつものように、「あぁ~・・!。」と、元気に声を掛けてくれた。