トツトツ・・トツトツ・・と、千歳山の登山道を、何時ものように足元だけを見詰めながらリズム良く登り続けていると、私の頭上からその足元に一枚の枯れ葉が舞い降りた。土に還ろうとしていた去年の落ち葉と重なって、茜色したその葉はよりいっそう鮮やかに見えた。私は思わず見上げてみれば、つい先日まで緑のグラデーションの美しさを楽しんでいた・・と思ったら、生い茂る緑の葉のところどころに、黄色や赤といった、様々な木の葉もいつの間にか色付き始めたようだ。それに、何時からだろうか、蝉の鳴き声も全くなくなり、たまに”コオロギ”の乾いた鳴き声が聞こえてくるだけ。
・・・それもそのはず、お盆を過ぎて、あっ・・という間に九月に突入、もう8日を迎えているのだから。
(緑のトンネルから抜け出し、急に視界が広がるこの登山道の光景が、季節に限らず、私はとても好きだ。)
私は、今日も又千歳山の懐に飛び込んで、そんな秋の気配を肌で感じながら何時ものように山頂を目指した。相変わらず、登る時間帯には関係なくたくさんの人と挨拶を交わすが、私のように、ショートパンツに半袖姿の登山客はすっかり減ってしまったようだ。それに、今日の午前は、曇り空で風は全くなかったのだが、それでも登山道では時々スーッと、僅かな風を感じる時があった。その僅かな風に、汗ばんだ体が”ヒヤッ”とするその気持良さを、私は何度か味わいながら、そしていつの間にか山頂に到着。展望台に昇り、限りなく続く下界を見下ろしながら息を整え、さて帰ろうか・・と振り向いたその正面の景色に、あぁ~・・・綺麗だ!・・と、私は思わず足を止めた。
そして、このささやかな美しさを写し撮ろうとおもむろにデジカメを構えた。展望台の黒っぽい柱や手摺の間から見えた、明るく色付く木の葉に・・なんともいえない美しさを感じた。私は、この光景を暫し眺めながら、繰り返される季節のこの”奇跡”に立ち会える幸せと、自分だけに限らず、"生きている・・・"ということの無条件のこの素晴らしさを、じっくりと味わってみた。