仕事に追われていた昨今、私は今日、久しぶりに日増しに色付く千歳山の懐に飛び込んだ。そして、トツトツ、トツトツと、秋の香りを味わいながら何時ものペースで登山を続けていると、遠くからたくさんの子供たちの声がかすかに聞こえてきた。さてさて、今日は珍しいほどの秋晴れに恵まれ、子供たちもそんな陽気に誘われたのだろうか。・・と思っていると、その声がだんだん近づいてきて、私と・・「こんにちは」と、次々に挨拶を交わしあっという間に数十人の子供たちがこの千歳山を降りて行った。私は、又息を整えトツトツと何時ものように登り始めた・・・と思ったら、しばらくして又も下山する子供たちの大群が押し寄せた。私は、又も一人一人の子供たちの「こんにちは」へ「こんにちは」と挨拶を返し、それは呼吸する間もないほどに連発した。それにしても延々と続く子供たちのこの列、いったいどこまで続いていることやら、と、ひたすら繰返し・・繰返し「こんにちは」と挨拶を交わす。そして、これが最後尾か、列からちょっと離れてしまった遅れ気味の子供三人と挨拶し、ようやくこれで子供たちが去って行ったようだ。やれやれ、何百回「こんにちは」といっただろうかと、時々は子供たちに道を譲りながら登山を強いられた私は、大きく深呼吸をして、何時もの呼吸法で、改めて又登り始めた。
そして、山頂に近づいたか・・と思ったら、又も子供たちの声が聞こえてきた。数百人の子供たちが下山していったのだから、まだ子供たちがいる・・とは考えられず、私は、たぶんあの子供たちの声が山に共鳴して聞こえているのだろう・・・と思いきや、子供たちのはしゃぐ声が、又だんだん大きくなって、何と、千歳山の山頂が足の踏み場もないほどに、数百人の子供たちの群れで埋め尽くされていた。
私は、その一人一人の間をすり抜けるように通り過ぎ、その都度又・・「こんにちは」の連発。そして、山頂展望台は、ジャングルジムごとき、それはそれはたくさんの子供たちの遊び場として占領され、私は展望台を諦めるしかなかった。今日、私は、恐ろしいほど多くの「こんにちは」責めに合い、“リズム良い呼吸法”・・どころではなかった。でも、初めて山頂に立ったのだろうか、下山を始めた私の背中に展望台から、「すっげぇ~・・!」・・「きれい~!」・・「きもちいい~!」という、遠くに美しい下界が見えたのだろう・・たくさんの子供たちのはしゃぐ声が聞こえてきた。
子供たちの、そんな素直な驚きとその感動の言葉は、山の素晴らしさ、・・登山の素晴らしさ、・・何と言ってもこの千歳山の素晴らしさを、子供たちは肌で感じとったのだろうと。・・そうと思うと、下山しながら子供たちの声がだんだん小さくなりながら、私もだんだん、“こころ”が、ほのぼのとしてきた。
山頂で、私は一人の子供に話しかけた。「君たちはどこの学校?」、「付属小学校です。」、「じゃぁ~、一年生から6年まで全員で登っているのかなぁ~」、「はい」。それならこれだけの子供たちがいるのも納得である。
それにしても、こんな時は特別に輝くのだろうか、子供たちの瞳が眩しい!。そんな子供たちが知ってか知らずか、登山道のところどころで見える真っ赤に染まった"ナナカマド"の葉がとても美しい。