登山客の・・小さな“気配”に・・ |
ガツ・・ゴリ・・ゴリ・ガリ・・と、圧雪が氷となった登山道を、アイゼンがしっかり捉える力強い音も何故か懐かしく感じた。それもそのはず、登山を続けてほぼ二年半、冬の千歳山に潜り込んでアイゼンの音を聞くのは二回目となる。先日は、元旦の猛吹雪の“登り初め”と比べれば、気温は低いものの直射日光も時々差し込む、とても穏やかな日だった。防寒具に身を固めた私は、登山道が氷で覆われはじめた千歳山の五合目辺りで足を止め、大きな岩に腰を下ろした。そして腰のベルトに結わえた袋からアイゼンを取り出し、手袋を外したかじかんだ手でおもむろに私の両足に装着した。そして又、ひたすらその足元を見つめながら、一歩一歩、アイゼンの爪を氷に突き刺すように、ガツ・・ゴリ・・ゴリ・ガリ・・と、何時もとは違う音を立てながら山頂を目指した。
すると、長靴だろうか?、氷の登山道を避けるように、時には林の中に・・・時には、ようやく探し当てた?柔らかな雪の上に、明らかにアイゼンを付けない同じ靴跡を見つけた。滑落せずに無事に下山できただろうか?・・と思いながも、誰とも知れない、右往左往するそんな人の姿を想像し、私は、思わず心が緩んだ。そして今度は、ようやくたどり着いた山頂展望台で、何時、誰が作ったのだろうか、手摺に乗ったこんな小さな三つの雪ダルマを見つけた。冬に入って、すっかり登山客も少なくなったこの日、私は、私と同じように千歳山を愛する姿の見えない様々な登山客の気配に、少しだけ“こころ”が温かくなった。
(下は、この日の展望台からの絶景。)