今、ワインの製造過程を見学できる高畠の「高畠ワイナリー」で、“啓翁桜”が満開を見せている(写真)。私は昨日、仕事の合間に、一足早い“花見”・・としゃれてみた。
「枝を切り取られて・・かわいそう!」。私が、綺麗だぁ~・と、一人ごとを言いながらデジカメを構えていたら、隣で熱心に観察していた母と娘さんなのだろうか、そんなつぶやきが聞こえてきた。確かに、枝を切り落とされ、しかも春と勘違いさせられて花を咲かせた“啓翁桜”には、春を待たずして美しさを放つがゆえに、なおのこと、その散り行く様には“さくら”の悲哀さえ感じさせる。観たい・・観たい・・といっては、枝を切り落とし、床の間や花器に差し込んでは眺め楽しむ私たち“人間”の勝手さは、桜に限らず美しい無数の花たちにも言えるのかも知れない。勿論、植物にも“いのち”があるのは承知しながら、食肉や菜食とは又違った意味で・・・そんな人間の、大いなる・・“意味のあるわがまま”を、どうか、許してはくれまいかと、親子連れのあのつぶやきに、私は、そっと“こころ”の中で答えてみた。そんな“啓翁桜”が、「高畠ワイナリー」の見学通路いっぱいに花を咲かせている。
江戸城に生花をおさめていた"花き商"が冬に花を咲かせる手法を編み出したと言う“啓翁桜”。「支那桜桃」と「彼岸桜」を交配してつくられ、いきおいよく成長する啓翁桜は枝の伸びがよく、枝を切り込んでも弱らず切枝用に適しているのだという。ハウスの温度は日中が20度、夜は10度ぐらいに調節、すると桜は春が来たと勘違いをして開花する。特に、山形県は秋の訪れが早いため、桜は早く休眠に入り早く終えることができ、そのおかげで、お正月に合わせた開花も可能なのだという。現在では山形県が全国的にも有数の産地となっているようだ。