「施政方針演説」に、劇作家「平田オリザ氏」が! |
それは、紙面の一面を越える長文で、演説の時間は、歴代最長となる51分間だったという。(ちなみに、これまで最長だったのは2002年の小泉元首相で、47分間。)
それは、以外にも「いのちを守りたい、・・いのちを守りたい、と思うのです。」から始まった。そして、印象的だったのは、「目指すべき日本のあり方」について語った中で、特に、「オバマ大統領」のノーベル平和賞の演説にも引用された、インド独立の父「マハトマ・ガンジー」、彼が指摘した「七つの社会的大罪」の引用が印象的だ。
「理念なき政治」
「労働なき富」
「良心なき快楽」
「人格なき教育」
「道徳なき商業」
「人間性なき科学」
「犠牲なき宗教」 右ネットから
首相は、まさにこの「七つの社会的大罪」が、今の日本と世界が抱える諸問題を、鋭く言い当てていると訴える。私も、このガンジーの「七つの社会的大罪」を何度も読み返しながら、この、短い言葉の組み合わせでありながら人類の深い本質を見事に突く、永遠に引き継がれていくべき人間遺産ではないかと、改めて感動を覚えた。ただ、「労働なき富」・・に対して、野党席から「(労働なき富とは)あなただ!」と、大きなヤジが飛んだというが、母親からの多額の資金援助を連想させてしまったのだから、・・しかたがない。
そして、冒頭に飛び出したこの「・・いのちを守りたい」が、最後まで繰り返し繰り返し語られる。それに、これまでの政治家からはあまり聞こえてこなかった“文化」”いう言葉が不思議と目立ち、それは、鳩山首相独特のビジョンなのかと、私には、この全文からの印象は、とても耳障りの良い演説に聞こえた。・・・それもそのはず・・なのか?、官僚を介さず「政治主導」で行われたという、この51分に及んだ「施政方針演説」の文案作りには、ある重要な二人の存在があった。
一人は、「松井孝治」官房副長官、そしてもう一人が、あの劇作家「平田オリザ」内閣官房参与だったというのだ(右:ネットから)。演説直前の29日午前に平田氏と松井氏が首相執務室に入り、首相の練習に約1時間半を使ったという。平田氏は、演説の「脚本」と「演出」にも関わったのだろう、演説の話し方に“間”を置いたり、息をつぐタイミングや、強調したい所はゆっくり読むなど、全体を通して強弱を付けたのだという。「・・いのちを守りたい」や、「文化」のイメージが、彼の演出だとしたらむしろ合点が行く。そして、当日の傍聴席には、「主役」の晴れ舞台を見守ろうと、この側近2人の姿があったともいう。
私は以前、酒田市の北に位置する“遊佐”の地の、芝居小屋となつたある蔵で、「平田オリザ」氏が、「青年団」という劇団を率いて行われた芝居を見た記憶が蘇る。「現代口語演劇理論」なるものを提唱する彼の、「・・ときに聞き取れないようなぼそぼそした声で喋る」「・・複数のカップルの会話が同時進行する」「・・役者が客席に背を向けて喋る」といった、登場人物たちはただただ舞台上で淡々と会話を続けていくその様は、それのまでの演劇好きだった私には、とてもありえない芝居だった。私は今でも、舞台上のあの不思議な数々のシーンを、鮮明に思い出すことが出きる。その彼が、「鳩山首相の施政方針演説」を演出していた・・ということが、私には、この演説がとても演劇的に感じ、彼によって演出されたその演説の光景を是非見てみたかった・・と。
鳩山首相はこの演説を、「理念先行で具体論に欠けた」という批判があるが、「やはり政治には理念が必要で、理念なき政治はバラマキになる。批判もあえて覚悟の上で、思い切ってやらせていただいた。」と反論したという。