1・2時間ではとても見切れない『東北芸術工科大学/終了研究・制作展』だが、先日、私も時間が足りず見ることができなかった作品がたくさんあった。そこで、大学へ再び訪れた私は、卒業生や大学院生の洋画・日本画といった、青春を悩みながらも自分自身の素直な思いを、言葉では無いが、・・むしろ時として言葉よりも饒舌に語る“キャンバス”と向かい合う学生のエネルギーとその情熱を感じながら、一人一人・・一枚一枚をじっくりと観賞してまわっていた。
すると、直ぐ隣から、学生に囲まれ批評をする何時もの「京都造形大学芸術大学」の教授でもある著名な画家「木村克朗」氏の声が聞こえてきたではないか。私はここのところ、同じこの『終了研究・制作展』で、3年連続して彼のそんな場面に出くわしている。私は、学生たちの間からその光景を静かにそっと覗いてみれば、驚きかな、先日、雪深い朝日町の「創遊館」の小さな写真展で、私を感動させてくれた芸工大学生「竹原優」さんの写真の批評中だったのだ。
(その時の私のブログ
「『めくるめく東北』・写真展・・“ダブルプリント”という手法!」もどうぞ。)・・・が、先生が
「絵を描く人の写真らしく、絵画的かも知れないなぁ~頑張って!」。「・・はい。」と、後ろ向きの小柄な学生が返事をした(冒頭の写真)。
え、批評は終わってしまったのか・・・と、全員が足早に次の学生の作品に向う途中、私は作者である彼女を探し出し声をかけた。そして、先日、私が朝日町の「創遊館」で感動した思いを伝え、エールを送ると、彼女は柔らかくにっこりと微笑んでくれた(写真)。彼女の、感性が迸るような数々の作品からは、想像出来なかった可愛くも華奢で小柄な彼女だが、その未知の感性を秘めた表情はとても魅力的だった。今後の彼女が生み出す作品に、私は、大いに注目したいと思った。
(山の風景と、横たわる一人の女性をダブルプリント、つまり、重ね合わせることによって、奥深い不思議な魅力を放つ。)
そして次の学生の作品(下)に、木村先生・
「この辺の黒い部分が気になるんだよなぁ~・・!。」学生・
「・・この辺でしょうか?、これは、あの黒板用の緑の塗装なんです。」。それを聞いていた私もちょっと驚いた。つまり、黒板に向う気持で描いたということか。
木村先生・
「黒板ね!・・あのね、私の孫がね、自分で書いた絵を私にFAXで送ってくるんだけど、あの無心に柔らかな線は私は決して描けないと思ってしまうんだよ。君のこの絵から、それと同じような感覚を感じてしまう。」といって絶賛し、世界の同じようなタッチの画家二人を学生に紹介していた。学生は、その画家の名前を忘れてはいけないと、何度も繰り返し確認していた。木村先生・
「君はきっと感動すると思うよ!。そしてね、それらの画家達は皆、君と同じようにもがきながらも何か突き抜けた“もの”を獲得しているんだよ。君の絵は魅力に溢れているけど、もしかすると足りないのは、・・その辺じゃないのかなぁ~・・。」と、的確なアドバイス。良くわかっていないかも知れない彼女は
、「・・は、はい・・」と、それを、精一杯想像するかのようにうなずいていた。先生のその一言は、彼女にとって、忘れられない素敵なアドバイスとなったに違いない。
木村先生・
「卒業して・・それからどうするの?」
学生・
「大学院に進もうと思ってます。」
木村先生・
「落ちたら・・どうすんの?」
学生・
「先生・・止めて下さいよ!」
この彼女の一言で、 ずっと張り詰めていた雰囲気が・・一瞬和んだ。