以外に逞しい・・“カタクリの花“ |
私はその日、千歳山の登山道をトツトツ・トツトツと、足元だけを見詰ながら、何時ものように山頂へ向っていたのだが、私の頭上では、まるで滝つぼに落ちる水の音のように、ザザザザ~ザザ・・と、風を受けた無数の枝が音を立てている。私の足元には、直射日光を受けた動かない太い幹の濃い影とは別に、ゆらゆらと、強い風に揺らぐ薄くなった遠い枝の影が動く(左)。ふと、頭上を見上げてみれば、枝は予想以上に大きく揺れていた。「すごい風だなぁ~・・!」と、独り言を言いながら山頂に近づくと、今度は、その風を少しずつ体で感じるようになった。足元の昨年の枯れ葉が、風に飛ばされカサカサと音を立てる。そんな千歳山の、春の音を聞きながら、私はその日も、風のとても強い千歳山の山頂に立った。
何時もよりも汗ばんだ体で下山した私は、自宅まで暫く続くアスファルトの道端で、そんな風に大きく揺らされている、か弱い一輪の「カタクリ」の花を見つけた。今にも吹き飛ばされてしまいそうだが、風を受けながらも以外にしっかりと耐えている。今にも折れてしまいそうなそのか細い姿は、何時になく逞しく見えた。