三日に一度登頂を果していた千歳山だが、青森旅行や仕事に追われていて、もう10日間は登っていない。昨日は、エアコンに頼りたくなるほどに蒸し暑い陽気だったが、昼過ぎから足にはスニーカーと手に一本の杖を持ち、私は何時ものように早速マンションを飛び出した。
(この美しさに、何時もつい足を止めてしまう、熊笹の群生。)
10日ぶりの私の体だが、足の軽さやリズム良い呼吸も、何時もと全く変らない。ただ、この蒸し暑さに直ぐに汗ばんでしまった私は、早速半袖シャツのボタンを外した。それに、足の僅かな汗がズボンに絡み、前へ前へと突き出す私の足の屈伸を邪魔する。昨年よりも12日遅いという梅雨入りではあるが、季節はもう夏。Tシャツにショートパンツでよかったか・・と、少々後悔。私は、僅かな風とそんな蒸し暑さの中、10日ぶりに山頂を目指してひたすら登り続けた。
春先に見せた初々しくも弱々しい薄い緑の葉も、しっかりとした深い緑に変り、どの木の緑もお互いに同化して同じ色に見える。足元の登山道には、何やら雨の流れが作った水の道が見えるが、先日、かなり強い雨が降ったその痕跡のようだ。そして、先ほどまで曇っていた空から時々強い日差しが差し込み、登山道には何時ものように又グラデーションの強い美しい木洩れ日が出来た。そんな日差しを受け止めようと、葉を精一杯水平に広げたこんな葉にも美しさを感じ、思わず足を止める。(下)
久しぶりに登り続ける・・そんな私の足元に、どこからとも無く一枚の葉がひらひら舞い降りた。(下)
だが、どうしてこの葉はこんなに鮮やかな黄色なのかと、私は思わずその場で真上を見上げてみれば、一面緑一色の木々の中にも、近くの低い枝にも、こんな色した葉は何処にも見あたらない!。えぇ~・・!、と、私はキヨロキヨロとあたりを見渡しながら、そんな不思議さに何故か思わず笑いがこみ上げ、又トツトツと登り始めるも、「遠くから、僅かな風に乗って舞い降りたのか・・?」と、私は、暫くはあの一枚の葉の不思議さを思いながら登り続けた。
そして、山頂に近づくも、何時も姿を現す展望台は、生い茂る緑に覆われ、その姿のすべてを見ることが出来なくなっていた(上)。この10日間で、いかに緑が成長しているかを、私はまさに体で感じていた。
千歳山の懐に潜り込み、様々な木々の緑に囲まれていると、何故こうも癒され穏やかな気持になれるのか?。もしかすると、覚えているはずも無い、母親の“胎内”で守られていたその記憶に似ているのかもしれない・・と。私は、展望台に登り、薄く“モヤ”がかり色あせた下界を眺めながら、そんな勝手な想像をしていた。