昨日、仕事が一段落した午後、さて、千歳山に潜るか・・と、ベランダに出てみれば、もわっとする真夏日の気温に無風状態。更に天気予報は午後からは雨のようだ。ならばと、私は、ショートパンツにTシャツ姿で、右手には杖、左手には折りたたみ傘を持ちマンションを出た。
大鳥居のある何時もの登山口から、何時ものようにトツトツ・トツトツと登り始めるも、全く動かない風は、息苦しささえ感じさせる。もわっとする蒸し暑い陽気で、私は直ぐに汗ばんだ。それでも、たまにほんの僅かな風が、体のどこかに触れただけで気持ち良さを感じ、気分が変わった。雨は、いっこうに落ちてくる様子はなく、むしろ、たまに強い日差しが差し込み、又美しい木洩れ日を作る(上)。
(長い木の杖を両手に持ち、それはそれはゆっくりと登り続ける何時ものおじさんを追い抜いた。)
登山道を折り返しても折り返しても、日差し以外には一枚の葉さえ全く動かない無風状態の景色が続く。そんな千歳山の懐に潜り込み、トツトツ・・トツトと、リズムよく登り続ける私の足元で、私は、思わずドキッ・・とした。登山道に、誰かが落とした小さな傷バンドが、ゆっくりゆっくりと、確かに動いているのだ。そっと目を近づけて覗いてみれば、一匹の小さな蟻が、その傷バンドをどこかに運ぼうとしているではないか。木の葉ならいざ知らず、蟻にとっては巨大なこの傷バンドをどうしようというのだろうか?。私は、その傷バンドの行方を確かめたくなるも、気を取り戻し、そんな蟻の力に改めて関心しながらも、又ゆっくりと登り始めた。暫くすると、今度はあるはずのない何やら小さなせせらぎの音が聞こえてきた。雨水の流れる音かと思えども、昨日と今日の二日間、雨は落ちてはいない。えっ~・・と思いながら近づけば、登山道には確かに小さな水の流れが出来ていた。何処から流れてくるのかと、私は登山道の水の流れを追って、上へ上へと辿って行った。すると、登山道のすぐ脇で、水面が日差しにキラキラと揺れる小さな水溜りを発見。どうやら、水の源はここらしい(下)。
そんな水溜りを眺めながら、2日前に降った雨がこの千歳山に染み込んで、それが今ここに湧き出ている・・ということか・・と。千歳山登山を続けて二年を超えるが、はじめて見る光景である。私は、そんな不思議な水の流れを空想しながら昨日も登頂を果した。そして、折り返し又同じ登山道を下山したのだが、何時まで流れ続けるだろうか、やはりその水の勢いは落ちてはいかった。
下山し、動かない風に熱気だけが湧き上がるようなアスファルトの舗装を、ゆっくりと自宅に向っていたら、登山に向うときに気にも止めなかったこんな美しいアジサイの存在に、私は、暫し足を止めた。