手袋をはめてくれば良かったか・・と、少々悔やみながら、ハァーハァーと、両手を自分の息で暖めた。手がかじかむほどの寒さではあるが、三合目近くに差し掛かった時に、私の体はようやく熱くなり、手の先までも温かくなってきた。それにしても昨日は寒かった。最高気温が13度、そして最低が5度だというのだからまるで真冬の気候である。そんな時でも、私はやっぱり千歳山である。
(上は、昨日の山頂付近。)
(ベランダ正面に見える千歳山は、日に日に色付いていく。)
昨日は、終日傘マークの天気予報。今にも雨が落ちそうな、そんな鉛色の空を眺めながら、私は、左のお尻のポケットに折りたたみ傘をねじ込んでマンションを出た。かじかんでいた手もようやく暖かくなり、登山道を折り返すたびに現れる色ずく木々の美しさを楽しみながら、私は、何時ものリズムで山頂を目指した。昨日は4日ぶりの千歳山だが、木々は急に色付き始めたようで、登山道の両側に色付く足元の小さな葉も、よく眺めれば何処を取ってもアートに見える。
私は、目を左に右にキョロキョロさせ、そして時々後ろ向きになり紅葉の美しい光景を堪能し続ける。そして、前日の雨で少々湿った登山道を、私はひたすら自分の足元だけを眺めながら登り続けていると、枯れ葉となった真っ赤なたくさんのカエデの葉が目に飛び込む。
私は思わず、綺麗だぁ~と独り言を言いながら、上空に目をやれば、無彩色な鉛色の空に“カエデ”の葉が美しく咲き誇っている。曇り空の沈んだ暗さに負けない茜色の“カエデ”だが、もし強い日差しを受ければどれだけ鮮やかだろうかと、そんな光景を眺める楽しみができた。
。山頂付近に差し掛かると、段々風が強くなり、寒さが増してきた。
まるで真冬の“千歳山“から下山し、我が家にもどった私は、物入れの奥から一枚のセーターを手繰り寄せた。