千歳山に・・アイゼンの“落し物“ |
(そんな光と影は、まるで流れる生クリームのようなその時だけの美しい光景を作り出す。上)
そして、七合目あたりの、ちょっとした急斜面を注意しながら降りていると、私と同じ片足だけのアイゼンが落ちているではないか!。さて・・、どうしたものか?。でも、私の後から下山する人はいないはずなのだから、落とし主が気付けば戻るかも知れない・・と、私は拾ったアイゼンを片手に下山を続けた。
「だめだったか、気が付いていないか・・!。」と思いながらしばらく下山を続けていると・・・、案の定、なにやら登っている時にすれ違った見覚えのある年配の女性が、又登ってくるではないか。足元をきよろきよろ見詰めながら登り続けている彼女に、「アイゼン落としませんでしたか?」・・とアイゼンを差し出すと、急に顔を上げ「すいません、ありがとうございます。」と近づき、「バンドがゆるかったんだと思いますよ!。」に、「そうですねぇ~、助かりました。」と、ほっとしたような表情でおもむろに腰を降ろし、アイゼンのバンドをゆっくりと調整しながら装着し始めた。彼女もあそこまで戻るのは大変だったろう・・に、あぁ~・・良かった!と、私はそんな彼女を後に又下山を続けた。こんな時は、山の仲間とちょつとだけ触れ合えた気がして、どことなく気持ちがいいものである。