今日の・・“千歳山” |
流石にこの時間帯には、登山客はまばらだ。何時もの登山道は、先日からの好天気ですっかり湿気を失い、足で飛ばした細かな土は一瞬強い風に舞う。私の頭上では、木々の間を通り抜ける風がゴーゴー・・と音を立てている。そんな・・強いがとても優しい風は、ジャンパーの袖をまくった私の素肌に触れ、そのヒヤッとする感触がとても気持ちがいい。そして、登山道を折り返す度、何故か全く風を感じない無風スポットに暫し入り込む。その瞬間、春を通り越し、体の熱が混じったムットとする真夏のような熱気すら感じた。
さてさて何処から漂ってくるのか、そこにかすかに葉の青い香りがした。間もなくして山頂に立てば、急に風の強さも弱まり、先ほどまで全く聞こえなかった、甲高い鳥の囀りが、あちらからもこちらからも聞こえてきた。私はその場に暫し立ち尽くし、耳をそっと澄ませあたりを見渡せば、いつもと変らぬその情景だが、それが、私には何故か”とても美しい”・・と思えた。
千歳山は、もうすっかり青い新芽を待つばかりである。