昨日の早朝、まだ暗いうちからヒューヒュー・・という大きな風の音で目が覚めた。久しぶりに聞く大きな風の音である。我が家はマンションの5階の高さ、強い風がどこかに当たって共鳴しているのだろう。その風は明るくなってもいっこうに弱まる気配は無い。それどころか、横殴りの雨まで降り出し、荒れた天気となった。私は、おもむろにベランダに出て、体に当たる風の強さを肌で感じながら千歳山を見上げた。そんな風と雨に、流石に昨日は登山への気力が失せてしまった。・・・そして徐々に、何と・・雨が雪へと変っていった。
そして今朝、千歳山を見上げれば、山頂付近は“春の嵐”が運んだ雪で白くなっているではないか。私は、何故かウキウキする気分で、早速登山の身支度である。風は感じないが、雨が落ちそうな鉛色のそらを眺めながら、ズボンのお尻のポケットに折りたたみ傘をねじ込んだ。
登山道は、思いのほかぬかるんでいて、用心のために履いた深長靴が、ピチャピチャ・・と音を立てる。そして、七合目あたりに差し掛かると、えっ!・・雨かっ?・・と、頭上を見上げれば、先ほどまで鉛色だった空には、逆に青空が広がっているではないか(下)。
(枝には、融けずに残った雪がまだたくさん積もっている。)
つまり、雨ではなく、今朝降り積もった木々の枝の雪が溶け、それがまるで大粒の雨のように、ボタボタと降り注いているのだ。私はたまらず折りたたみ傘を広げた。左手に傘を、右手に杖を持って山頂にたどり着けば、そんな雨だれも全く無くなり、降り積もった新しい雪が、又あの美しかった冬のような景色を作っている。この千歳山で、また雪に出会えるとは思っていなかった私は、“春の嵐”が作ってくれた雪の美しさを、展望台のある山頂で暫し堪能である。