千歳山の・・“なかまたち” |
今日は、深く被った帽子さえ飛ばされそうな風だが、強く肌に触れればカラッとしていてとても気持ちが良い。でも、ひとたび登山道に入れば、頭上で木々がぶつかり会う音を立てながら風を遮る。それに、昨日降り続いた千歳山に染み込んだ雨が、湿った熱気となって立ちのぼり、思わず私の体からは汗が噴出す。それでも、時々だが汗で濡れたTシャツさえ乾かしてくれそうな風が吹き付け、とても気持ちが良い。
山頂にたどり着いた私は、その展望台で、先日からリュックに入れ始めた保温抜群の水筒を取り出し、とてもとても冷たい水を体に流し込む。何と美味しいことだろうか!・・、たかが水・・だが、なんとも不思議な飲み物である。(右:何処までも続く壮大な光景を背景に、シルエットになった私の水筒と杖。)
そして、何時までも千歳山の懐に居続けたい・・という思いを残しながら何時ものように下山を始めた。トツトツ・・トツトツと下山を続ける私の眼下に、山頂を目指し登り続ける一人の男性の姿が目に入った。・・と思ったら、「うわぁ~・・!」と叫びながら、胸の前に両手を締め、何かにおびえるように飛び跳ねるがごとく後ずさり・・!。彼の視線の足元に目をやれば、藪に潜り込む蛇ちゃんの尻尾が見えた。私は笑顔で、「蛇ですかぁ~・・」と言うと、彼はすれ違いざまに、「だめだぁ~・・、蛇だけはだめだぁ!」・・「ダメだ!ダメだぁ~!」と、まるで独り言でも言っているように蒼白な顔。私は余裕のふりで、「4百回登ってますけど、出会ったのは三回だけですよ・・」と言うと彼は、「今日で19回目だけど初めてだぁ~・・」とうつろな目。私は思わず冗談に、「私より確率が良いですねぇ・・」と言えど、蛇ちゃんの残像が蘇っているのか、「だめだぁ・・だめだぁ~・・、蛇だけはだめだぁ!」と言いながら、私の400回という回数に驚いてもくれず、うつむいたまま何とか山頂に向かって立ち去った。私は以前、冬だけ登山を続けている人に出会った事があった。その理由を聞けば、「蛇がダメなのでぇ・・」と言っていたのを思い出す。今日すれ違ったあの彼は、又明日から登山を続けられるだろうか?。
そういう私も、人一倍蛇ちゃんはダメなのではあるが、それを上回る爽快感があるから続けられるのである。蛇ちゃん今日で四回、目の前にカモシカ一回、リスちゃん数回、私がこれまでの約400回の登山で出合った千歳山の“なかまたち”である。
下山し、坦々と続く自宅までのアスファルトの熱気が、又も乾いた肌に汗を滲ませる。空を見上げれば、すっかり濁った空は消え、白い雲の合間に覗く抜けるような空の青さが目に眩しい!。