“熊”・・かと思った!! |
ところが、登山道に入ると、時々風が嘘のようにぴたっと止まり、昨日までのゲリラ豪雨で濡れた土から湿った熱気が立ち込め、汗が噴出す。それでも、また時々吹き付けるとても気持ちよい風がちょっぴりだけ汗を乾かす。そんなことを繰り返しながら何時の間にか山頂にたどり着いた。
そして、何時ものように山頂展望台で、水筒の冷たい水を体に流し込んでいると、近くで「ゴトン・・」と、大きな音が聞こえた。展望台には誰もいないと思っていた私は・・かなり”びっくり”。恐る恐る隠れたベンチに近づけば、一人、おじさんが座っていて、目が合った途端、「こんにちは!」とお互い声を掛けた。そのおじさんは千歳山で何度も出会うおじさんで、何時も白いタオルで頭鉢巻をし、ステテコみたいなちょっと短いパンツにニットの腹巻をしているのである。その出で立ちは、登山・・と言うよりも、夏のお祭りで見かける、出店のおじさん・・という感じである。今日は、土曜日だというのに、出会ったのは五合目あたりですれ違ったおじさんの二人だけである。私は、このおじさんを展望台に残し、リュツクを又背中に、「お先にぃ~」と、さっそく下山を始める。
ところが、七合目あたりまで降りた時、左上方の緑一色の山肌から突然、ザワザワ・・ザワ・・という大きな音と共に、緑の葉が大きく揺れ、な・・なんだ!!・・と、驚いた私は、思わず“熊”かと思い、飛び跳ねるように二三歩後ずさり!。・・・と思ったら、さっきの展望台にいた、あの鉢巻おじさんではないか!。何と彼は、登山道では無く、立ち木や草や藪を掻き分けショートカット、道なき道をまっしぐらに降りていったのだ。スキーで言うなら、あの山頂から直滑降・・なのである。そして、まるでカモシカのような彼は、あっという間に見えなくなった。まだ立ち止まったまま降りて行く彼の後姿を見詰めていた私は、「勘弁してくれよぉ~・・!」と、独り言。思えば、千歳山で熊と出合った話は聞いた事は無いが、それにしてもなんとも逞しいおじさんである。