『県美展』・・二年連続受賞の彫刻に驚嘆! |
私は、記憶の中のある彫刻を思い出し、昨年の「県美展」のパンフを開いてみれば、やっぱり・・・!。それは、「アリストピア」と題された、似たようなイメージの作品が「県展賞」を受賞していて、勿論作者も同じ「那須 悟」氏。彼は、二年連続して最高賞である「県展賞」を受賞したのである(昨年のブログもどうぞ)。勿論、審査員も違えば、評価も微妙に違ってくるものだろうけれど、この作品の、ある不思議なパワーが両審査員を唸らせたのだろう。
作品全体から、作者の思いや時の流れが伝わり、楽しい物語を感じた。空間を上手く使い、象や時計、階段の構成がしっかりしている。素材の鉄は加工が難しいが、たくみに使いこなし、努力の跡が伺える。
とは、今年の「彫刻」部門の審査員である、「大成 浩」氏のコメントである。
左下には、象がハシゴを上ろうとしている姿がある。その又上には細長く頼り無い階段が続く。そして、視線をその又上にやればお面のような人の顔がそんな光景を眺めているようだ。そのすぐ横には、何やら時計の針が見え、微かに時を刻んでいるのだろうか?。
素材が鉄なだけに、曲げて切って延ばす・・といった作業は、そう簡単な事ではないのだろう。だが、まるで、粘土でも捏ね回すような、作者の、自由自在の手の巧みさがストレートに伝わってくる。形の素晴らしさだけではない、あえて、曲げて切って延ばす・・その手の先の痕跡をそのまま残すことで、より芸術性が高まっているように感じた。ある部分は緊張が走るほどに真っ直ぐに、あるところは不規則に曲がり限りなく柔らかく、そしてデフォルメされた象と時計と人間の顔が、遠くて深い物語を語っている。
さて、彼は今後どんな物語を語ってくれるのか、来年の「県美展」を又注目したい。