向井亜紀 “代理母出産” |
“赤ちゃんポスト” の設置に踏み切った。
最近、そのポストに・・3歳の子供を置いて去った父親がいた。
私が、今日突然こんなブログにしようと思ったのは
少し前の新聞の、夫を見つめる彼女の毅然とした目がとても印象的な
その記事の切り抜きを・・・久しぶりに目にしたからだ。
脳死や臓器移植・クローン人間・代理出産など
人間の生と死に関して、この倫理的にも結論の出ない様々な問題が
歴史や文化や宗教の違う国々でも
以前からTVやいろんなメディアで議論されるのを目にする。
私も、いつか自分が直面するかも知れないこれらの問題について
以前からいろんな本を読んでみたり、私なりに考え、そして疑問や矛盾を感じてきた。
先日、代理母出産が日本の法律では「実子」として認めない判決が下された。
「母子関係は分娩の事実により発生する」・・・・ 最高裁判決。
しかし、大半の人は代理母出産を伏せて、国外で生んだ実子・・・として届けるなど
いろいろな矛盾や問題を残したまま、この裁判が結審したのだ。
それは、妊娠と共に発覚した”子宮頸癌”で、子宮全摘出手術を受け入れた「向井亜紀」
あえて代理母出産を公表し、”再発”という自分の命の危うさを抱えながらも
新たな命について・・・その彼女の挑戦とそして法律との戦いだったのだ。
私は観ていないが、ドキュメンタリー番組
「逢いたかったわが子よ~向井亜紀、代理母と歩んだ1227日の全記録~」(フジテレビ系)
で放映もされている。・・・・そして、様々な物議をかもし出した。
まず、代理母出産には、4つの方法があるようだ。
1) 夫婦の受精卵を 代理母の子宮に入れ、出産する。
2) 提供された卵子と夫の精子を 体外受精 その受精卵を代理母の子宮に入れ、出産する。
3) 提供された精子と妻の卵子を 体外受精 その受精卵を代理母の子宮に入れ、出産する。
4) 提供された精子と卵子を 体外受精 その受精卵を代理母の子宮に入れ、出産する。
最近は 5)として
夫の精子(もしくは精子バンク)を使用して代理母が人工授精して出産する。(サロゲートマザー)
「愛する立派な夫のDNAを残したい!」 という妻・向井亜紀の熱い思いで
この夫婦の場合は、2)の方法を選択した。
往々にして、臓器移植の問題も、「移植を受ければ命が助かる・・」といった
提供を受ける側の論理が先行して、臓器を提供する側の“脳死”といった問題など
解決出来ないまま、主に移植の倫理的な良し悪しが論じられてきたのが気になっていた。
この新聞記事でも、やはり依頼した側(向井亜紀)の思いと経過しか報道されなかった。
私は、リスクのある代理母を引き受けた人の思いが知りたくなり
先日から時々・・ネットなどで調べていた。
当然ながら、その妊娠や出産には、最悪の場合死亡に至るリスクがあり
死亡に至らずとも母体に大きな障害が発生する場合もある。
そして、このようなリスクを軽視し、それらを代理母に負わせるのか!・・・といった
倫理面からの批判があるのも事実だった。
出産時に母体に障害が発生した場合などには
代理母側に不利な条件での契約がなされていることもあるようだし
黒人女性が代理母をつとめる場合より、白人女性の場合の方が、契約金が高額であるなど
代理母出産を批判するグループは、この現象が黒人差別につながる・・・といった強い批判もあった。
「向井亜紀」と代理母「シンディ」との間には、利益追求の斡旋業者がいるのも事実だ。
シンディの夫が自己破産していることや、その報酬 (およそ250万円) を家のローンにあてたことは
報道されなかったが、彼女は隠してはいなかった。
代理母出産を求める側の費用は、クライアント一組につき
平均1500万~1700万円かかるという。
体外受精一回の費用が約150万円、代理母に支払う報酬が約250万円
それとほぼ同額が斡旋業者などに支払われる。
それに検査代、渡航費、ホテルでの滞在費などを入れると、運良く1回で成功しても
1千万円ほどの費用になるのだという。(ネットから)
そのシンディは、妊娠中双子と聞き、出産の重い負担を避けるため一人の堕胎を申し出るが
向井夫婦の強い要望で断念。
そして彼女は、その双子を・・・望んで 「帝王切開」 にて出産した。
それは、愛情を込めた実子ではない子供を、自分の “産道” を通す訳にはいかなかった
・・・といった・・男である私には難しい女性のその出産に対する
深い “思い” があったのも事実だった。
そして驚くのは、彼女は収入を得るために幾度となくその代理母出産を“仕事”としていた事だ。
さらに、カリフォルニア州に住んでいるある代理母などは
「私は、その斡旋業者にとっては、モノなのよ!」 と薄汚い部屋で吐露したのだ・・・
ネットで読んだこの文章が何故か、私の脳裏から離れない。
勿論、報酬たけでは無くて、何らかの理由で不妊になった女性に対する同情の気持ちや
一時的にせよ、母性を楽しむのが好きな女性も・・まれにいるようだったが、
でも、大半の理由はその報酬が目的で
柳沢厚労相のあの驚きの発言のように 「女性は、子どもを生む機械!」 となっていたのだ。
それに代理母出産を依頼する側と、提供する側の両者の間に
これまでいくつかのトラブルもあった。
生まれた赤ちゃんを、依頼した夫婦に渡すのを拒んだ有名な 「ベビーM事件」。
障害児が生まれ、逆に、依頼者が受け取りを拒否する事件も起きていた。
今回の向井さんの行動によって、代理出産に追い風が吹いた・・昨今
人間に許される行為ではないといった強烈な批判も・・何故か無視はできなかった。
そして、ある医師は、無償の意思のある代理母を探したこともあったようだが
その途端、「応募が全くなくなった」という。
貧困の為、二つある腎臓の一つをお金に替えた話など
つまり、常にそこには、お金が介在していて、お金のために引き受けるといった
人間の倫理的な部分が欠如してしまっていたのだ。
結果、お金持ちには可能だが、貧乏人には命を守れない・・・生めない・・・
いわゆる”不公平”でもあるのだ。
つまり、この先の数十年後か?、悪い意味で突き詰めて行くと・・・金儲けの理由で
その臓器や子宮を生産するため、人間が人間を家畜のように“飼育”されても許されるのか・・・?
ということに・・極端ではあるが、どうしてもそこに行き着いてしまう!
子供をほしいが、生む事の出来なくなった向井夫婦の心境は理解できるし
批判するつもりは全くないが
臓器移植や代理出産には、ある意味では共通する倫理観がある。
将来、これらのことがあらゆる人に受け入れられる・・・・・とするならば、
私は、脳死や生殖補助医療の法律が整備され
そしてその提供者は全てにおいて無償であって
しかもその提供者の名前などの情報は全て秘密にされ隠される・・・
倫理的にもその方法でしか許されないのではないか・・とさえ思っている。
(ある意味では現在の”輸血”というシステムのように。)
日本では、法的にはあいまいだが厚労省は禁止の指針を示しているこの代理母出産。
これからまだまだ議論され、生まれてくる子供や全ての “ひと” にとって
幸せにつながることなのか・・
もっともっといろんな人達によって、十分検証される必要があるようだ。
日本語に、英語にはない、生死・明暗・表裏・悲喜こもごもの悲喜・など・・・生は生・・死は死・・
ではなくて、生死・・という一体となった曖昧な表現があり、輪廻転生という魅力的な言葉もある。
その歴史的な死生観や文化を大事にして、生かされている自分を誇りに思い
自分の死についてしっかり引き受けられる・・・毅然とした自分でありたい!・・・・と。
生まれてくる全ての子供達が幸せであってほしいと願いながら
男であり、出産という痛みと感動を知るよしもない私ですが
今日は何故か、ちょっと小難しい~・・青木・・でした!