『与 勇輝展 人形芸術の世界』 |
(左、『かえり道』 右、『おやすみ』 写真は全て公式カタログより)
仙台は定禅寺通りで繰広げられる“光りのページェント”に感動しながら
この日の目的だった、「藤崎」の催し物会場で行われている 『与 勇輝展 人形芸術の世界』を
時間も気にせず、こころおきなく堪能した。
思えば今年6月ころ、“酒田美術館”で開催された 《高橋まゆみ 創作人形展》や
9月には酒田の山居倉庫内にある 「酒田:夢の倶楽」にて開催された 「辻村寿三郎 新作人形展」
そして今回のこの 『与 勇輝展 人形芸術の世界』 と、製作手段やその感性こそ違うが
三人の人形作家の各々が極めた“人形芸術”の世界が繰広げられ
私は、それをほんの身近で堪能することが出来た、今年はそんな幸運な年となった。
「与 勇輝」の人形は、今年二月に海を渡り、パリ・バカラ美術館で個展が開催され
彼の世界から伝わってくる“人”の営みの素朴な力強さと爽やかさが
文化や歴史の違うフランスの多くの人達にも、同じ“ひと”として共通した感動を与えたようだ。
今回のこの 『与 勇輝展 人形芸術の世界』は、パリ展で初めて発表された
映画監督「小津安二郎」へのオマージュの作品も含め130体もの人形が一堂に介する。
彼の代表作とも言えるこの「夕餉のしたく」という人形。
子供にとっては重いこの「桶」には水が入っているのだろう、左手でバランスを取るこの一瞬。
写真ではあったが、この人形と初めて出会ったときの、理由のない強烈な感動が、
私のなかの“人形“という世界のイメージを、瞬時にして塗り替えてしまうほど
心に響いてくる衝撃的な感動だった。
今回、この人形と対面した瞬間、そんな以前の感動を超える
まさしく一瞬を捉えたこの子の表情や、体のバランス・・などという軽い表現では言い表せないほどの感動があった。
”人形”という表現を超えた圧倒的な・・・存在感・・・すら感じた。
顔の表情は、まず粘土によって(まさしく彫刻)形が作られ、石膏によって更に型が取られ
そしてその“カタチ”が和紙に移し変えられる。
気に入らなければ、その作業を幾度も繰り返し、一体を完成させるのに一年を費やすこともある
というから、「与 勇輝」といえど、この人形の“カタチ”はそう簡単に生まれるものではないのだろう。
驚くのは、衣装は勿論、靴や小道具も全て彼の感性によって作られるのだった。
そして“人形”という一つの“カタチ”に仕上がったとき、子供の可愛らしさ・・・だけではなく
生命力や・・・憂い・・さえ感じさせる彼にしか創れない“人形”が生まれるのだ。
私は、この人形に託された“魂”に触れながら、いつの間にかこの会場を繰り返し回りながら
この人形たちと、時間を忘れ何度も対面していた。