“月山” と “鳥海山” |
私は、酒田の「希望ホール」で行われる「プッチーニ作曲 オペラ ”ラ・ボエーム”」 を
チャンスがあれば是非観たいと思っていた。
なんとそのオペラに、私のお客様か夫婦で出演されると聞き、驚きながら・・
とても嬉しいことに、そのお客様からこの豪華なオペラの、しかも特等席での招待をいただいた。
(勿論、オペラのチケットはアマチュア劇団のチケットのような安価な値段ではない。)
私は、この瞬間からいろいろな意味で、この日がとても待ち遠しくなった。
3月16日(日)、いよいよその公演当日、私は久しぶりに晴れ渡る清々しい天気に恵まれ
112号線の景色を楽しみながら、二週間ぶりに酒田に向かった。
日曜日はこんなに車が少ないのだろうか・・?と、私の前を走る車すら無い。
天候に恵まれた昨日、澄み渡った青空が、雪の白さをよりいっそう際立ててくれた。
休憩で寄った”月山湖”も、水面の氷を雪が被ったのだろうか
その湖面が真っ白く染まった美しい月山湖を・・・・私は、始めて見た。
出かけ、晴れ渡るなんとも清々しい空気を味わいながら、私は目に見えない幸福感を味わっていた。
さて、今日はきっとその美しい姿を見せてくれるはずのあの”月山”が、とても楽しみになり
ウキウキした気分で又ゆっくりと車を走らせた。
「うわぁ~・・綺麗だぁ~・・!」と・・・思わず独り言。
その後、私はハンドルを握りながら、112号線の右に左に眼をきょろきょろさせ
山を彩る残雪の美しさを堪能し続けた。
じっくり車を止めて眺めたいポイントが沢山あったのだが、ガードレールや除雪された雪の山に阻まれ、なかなか車を寄せられるポイントが見当たらない。
そうこうしているうちに、あの田麦俣の“多層民家”も過ぎて、山の雪も徐々に少なくなった。
諦めかけ、あるドライブインで缶コーヒーを買おうと車を止めた・・・まさにその場所から
今、自分が走ってきた道の後ろに見えていたのだろうか、荒々しくもじつに美しいこんな景色が
偶然に眼に飛び込んできて・・・感動。
その後、ひたすら下り道を走り標高もだんだん低くなって、そしてようやく鶴岡に入ろうとしたその時!
今度は、遠くに浮かんでいるこんな“鳥海山”が目に飛び込んできた。
もしかすると、仕事で何度かこの112号線を走らせながら、それ以前も含めて
私は、この“鳥海山”は初めて観たような気がする。
まるで、空にぼんやり浮かんでいるような幻想的な“鳥海山”。
今度はそのポイントまでの道のりを楽しむことになった。
ところが、天気も快晴から徐々に薄く曇り始め、旧7号線を走らせているその正面に
絶えず見えている“鳥海山”は、刻々とその表情を変えた。
万が一見えなくなってしまう前に、なんとかその全貌が望めるだろうそのポイントを早く見つけ出したくも、高圧線に阻まれたり、樹木に隠され、電柱が横切り・・となかなかそのポイントが見つからない。
そうこうしているうちに、“鳥海山”が段々大きく見えながら、その姿が薄い雲でぼやけはじめた。
「おいおい、勘弁してくれよぉ~・・・。」と、又独り言を言いながら、あそこなら・・・と
人工物の全くない、絶好のポイントがあることを思いだし急いで向かった。
やはり薄い雲が立ちこめこんなに薄れてしまった。
車の外に出て、少しずつ刻々とその表情を変える“鳥海山”をしばらく眺めながら
私はこれまで、どれだけの感動的な“鳥海山”に出会っただろうか!
荒々しくも・・雪で白く燃える“鳥海山”
雪が夕日を受けて・・赤く染まる“鳥海山”
紅葉に薄く化粧され、幻想的に浮かぶ“鳥海山”
清々しく、真っ青な空を背に、くっきりと強く稜線を引く“鳥海山”
私はこれまで、一度として同じ“鳥海山”を見たことは無い。
この日、山形から酒田まで、残雪に輝く山々に、これまでになく魅せられていた。
余裕を持ち過ぎた時間を持て余し、私はあの“最上川スワンパーク”に寄ってみた。
もう三月の半ば、流石に“白鳥”はまばらだ。
さて、この白鳥は何時北帰行を迎えるのだろうか・・・?。
ようやくこの日の目的である「希望ホール」に向かった私は
今度は「プッチーニ作曲 オペラ ”ラ・ボエーム”」に、これまでにない
衝撃的な感動を体感することになる。