「プッチーニ作曲 オペラ “ラ・ボエーム”」 |
(酒田市、希望ホール:ネットから)
清々しく晴れ渡る天候に恵まれ、残雪も美しい「月山」や「鳥海山」に感動しながら
3月16日(日)午後、私は、余裕を持って開演の40分前に到着した。
既に、その酒田市「希望ホール」の入り口は、「プッチーニ作曲 オペラ “ラ・ボエーム”」の
公演を待ち焦がれた私のように、老若男女・・・チケットを握り締めた観客で一杯だった。
開演30分前開場になり、そんな観客で1.200を越える客席はあっという間に埋められていった。
私は、お客様から招待を受けた席を確認しようと早速その2階に向かった。
なんと・・そこからは、舞台の全景と一緒に、少なくとも1階の客席からは見えないだろう
指揮者も含めたオーケストラピットが同時に見渡せ、しかも1階2階の客席までもが一望できた。
普段では、手に入れることは難しいだろうこの特等席、招待いただいたお客様に
改めてこころから感謝した。
音響反射板など、この希望ホールは、音響効果においては最上の設備を誇っているわけだから
これから繰広げられるこの「オペラ」の音楽が、いったいどんな風に表現されるのか
心をうきうきさせながら開演を待った。
私は、演劇や現代舞踏やミュージカルなど、好きでよく劇場へ出掛ける。
「オペラ」は、ドキュメンタリー映画や、テレビなど、映像としては見た記憶は確かにあるが
それでも、「オペラ」の魅力の何も知らない私は、プロの声楽家による劇場での
本格的なこの「オペラ」は初めての体験となる。
開演時間となると、音楽監督を務めた「三枝成彰」氏が幕前に登場!
これから始まる“ラ・ボエーム”という物語の時代背景や、文化の違いによるそのセットや
小道具や衣装の意味の説明から始まった。
(この説明が無かったら、多分理解できなかった場面がいくつかあった。)
演技と音楽と歌がピッタリとあわなければならないという難しさもあるのだろうか
「酒田フィルハーモニー管弦楽団」は、48回の練習を重ねたことも知った。
そして客席の照明が徐々に落ち、60人を超えるオーケストラピットでは
指揮者の指揮棒の先に視線が集中、
「プッチーニ」の最高傑作と言われる「ラ・ボエーム」が、音楽と共に幕が上がった。
舞台は 第一幕 『パリの屋根裏部屋』
パリの下町にすむ若者たちの夢と恋と友情が描かれる。
ソリスト お針子ミミ:<ソプラノ> 大貫 裕子、ロドルフォ:詩人<テノール>水船 桂太郎など
その美しくも驚くほどの声量と、しかも艶のあるその声が見事に歌い上げていく。
当然ながら、ひたすらセリフが全て歌(歌詞)なわけだが、はじめなじまなかった私でも
その状況にはすぐに慣れてくる。
そしてその歌詞は、舞台の両袖の電光表示板により字幕となって流れるのだが
・・・・・・
貧しい生活だが、心は王侯貴族だ。
胸に抱いている夢のおかげで、百万長者のようだ。
でも時々泥棒がやってきて、私の宝石箱から
宝石を全部盗んでしまう。
それは「美しい目」という泥棒・・
・・・・・
第一幕アリア(ロドルフォ)『冷たき手を』
恋心を打ち明ける“ことば”や、悲しみを表現するその“ことば”の・・・・
なんとお洒落で美しいことだろうか!・・と
私は、華やかな舞台と相まって、つぎつぎに表示されるその素敵な“ことば”(歌詞)の表現に
終始魅了され続ける。
第ニ幕 『カフェモミュス』
この2階の特等席からは、顔の表情までも伝わってきて、オペラの迫力ある魅力を
肌で感じていた。
総勢100人を超えていただろうか、カフェモミュスと広場のこの場面で
絶えず動き回るひとりひとりの動きが、まさに活気ある群集の雰囲気となって
見事に表現されていて、鳥肌が立つほど圧巻だった。
演出:大島 尚志の、「オペラ」の世界を卓越した“わざ”が垣間見えた。
第三幕 『アンフェール門税関の前』
なにやらこの二人の恋が怪しくなっていく様子。
そして最後の第四幕 『第一幕と同じパリの屋根裏部屋』
“ひと”の苦しみや悲哀、人間の微妙な心理や、優しさや、悲しさなどが集約され
「プッチーニ」の音楽とドラマ・・・・そのクライマックスを迎える。
死ということによる愛する人との別れは、勿論その国籍をとわず涙が溢れ・・止まらない。
幕開きの前に、「三枝成彰」氏の説明は確かにその必要性は感じたのだが、その中で
「私なぞは、4幕が始まると同時に涙腺が緩んでしまい、4幕の最後の五分間
涙が出ない人は感情がおかしいかも知れない!」
などと、悔しくも確かにその通りとなったのだが
この説明だけは、落語の落ちをばらされたような気がして、一言余計だった気もする。(笑)
そしてその幕は下ろされるが、客席からの拍手が鳴り止まない。
何度かカーテンコールが続く中、その客席から「ブラボー!」という声が聞こえた。
指揮:中橋 健太郎左衛門
演出:大島 尚志
ソリスト ミミ:<ソプラノ> 大貫 裕子
ロドルフォ:<テノール>水船 桂太郎
・・・・・などなど
お客様がフルートを勤める60数名の「酒田フィルハーモニー管弦楽団」
58人の合唱団「コーロプリモ」・30人近い「酒田マリーンジュニア合唱団」
私は、この人達によって、西洋音楽の最高の芸術といわれるこの「オペラ」を
そしてイタリアのオペラ作曲家プッチーニの世界を堪能し、感動することが出来た。
私は、山形への帰り道の二時間半、感動の余韻を楽しみながら
「もしこの”オペラ”が、あのパリのオペラ座”オペラ・ガルニエ”で演じられたら・・」
などと、もっと欲張ってイメージを膨らませたりと・・・ハンドルを握りながら楽しんでいた。