「道路特定財源」~「一般財源化」・・・? |
私は以前スキーが大好きで、蔵王でナイターの出来るゲレンデに通いつめたことがあった。
滑走料も確か1000円でPM10:00まで滑り放題、一日券と比較すれば格段に安く
日中であれば1000円掛かる駐車場も、夜間は無料となった。
その蔵王まで、私の自宅からは1986年供用開始された「西蔵王高原ライン」を通るルートが
断然近かったのだが、当時、その通行料が片道720円・・往復すれば1440円とかなり高く
他の有料道路に比較しても「何故こんなに高いのだ・・!」と、疑問を持ちながら
私は、20分は遠回りになるだろう蔵王半郷経由で出掛けていた。
道路建設には勿論素人の私だが、「これじぁ~・・誰も使わないだろう!」という大方の予想通り
当時“予定通行量”を遥かに下回っていたことも、今さらながら思い出した。。
そんな現状を受けてのことか、その後は夜7時以降無料となり、その延長10.5kmのうち
有料区間を3.2kmに短縮、残り7.3kmを一般県道に繰り入れ・・ようやく1997年より
片道300円に料金が引き下げられた。・・・(というより、当初からその金額が妥当だった。)
以後、観光客にとって、とてもありがたい道路となった・・という。
私は、この新聞記事を読みながら、そんなことを思い出していた。
今日国会では、なにやらガソリン税収などの「道路特定財源」を、来年度から「一般財源化」し
道路整備を見直すことを閣議決定される・・・らしいが!
そんな日だからこそ道路に素人の私でも、この道路行政にちょっとは噛み付きたくもなる。
私は以前から、道路はある意味で“福祉”という面も含むのではないかと感じていた。
つまり、「不採算道路」・「費用体効果」だけではない、「費用体便益」という面や
交通渋滞の緩和、又、救急車や消防車が入れるだけの道路や、通学に安全を確保する歩道など
採算は合わないが作らなければならない道路もたくさんあるからだ。
ただ、それが国の補助金目当てに必要以上の道幅や、必要以上の構造にするから無駄が生まれ
それに、その無駄な道路幅によって潰され、二度と戻らない農地などをを思うと・・憤りは増してくる。
予想通行量の予測のズレと、料金設定の庶民感覚とのズレは、勿論この「西蔵王高原ライン」だけではなく、今もいたるところで感じることだ。その最たるものは、何といっても1999年最後の「尾道・今治ルート」によって完成したこの総事業費約3兆3700億円のあの「本四架橋」だろう。
(写真は全てネットから。)
その交通量が、2006年度は1日平均計約3万8000台と、予測の半分だったという。
高額な通行料が災いして、自家用車の利用は全く振わず、橋脚や橋台が置かれ
最大30%の優遇を受けている島の島民ですら、本土側に駐車場を確保し、バスや
海上タクシーを利用しているという。
そこを通ったことの無い私でも、「高額なお金を支払ってまで時間を買う意味が無い!。」といった、まさに庶民感覚とのズレは押して知るべしである。
今後も国や自治体に、建設費の利子を合わせた返済額約“3兆円!”という重い負担が続くという。
又、ETCの社会実験の実験フィールドともなり、総事業費:約1兆4,400億円 をかけた
あの「東京アクアライン」にも驚くばかりだ。
その推定交通量が供用時は、25,000台/日、20年後は53,000台/日と想定したようだが
実際の交通量は17,622台/日(平成18年データー)と大きく外れた。
この新聞にある、茨城県道路公社が運営する県道「常陸那珂悠利用道路」などは、その通行利用の見込みがなんと10分の一という杜撰なその予想によって、借金を返すどころか益々ふくらみ続け、結果、職員を3分の一にしたり、沿道の草刈を減らしたりしても追いつかず、結局は血税を投入せざるを得なかったという。この国の、そんな地方有料道路の半分以上が赤字路線だといい、交通量予測の甘さから、返済計画が破綻、税金で借金を処理した例は各地にたくさんあるともいう。
でも、どうしてこうも各“交通量予測”が外れるのか!・・・・民間では、その来客数や売上高の分析予想し、それを下回ってはいけないというボーダーラインを設定する。
実質それを達成できずに、しかも新たな手を打たなければ即倒産へと繋がるため
その分析には緊張感溢れ・・・真剣だ。
無駄な道路を無くするのは、「必要な道路」を決めるための交通需要予測や
運転免許保有率の見通しも必要なのだろうし・・・・なんといっても
「この通行料なら、時間を“お金”で買う意味がある・・!。」といったその庶民感覚の上で
金額を設定すべきだろう。
薄利多売ではないが、どんな立派な道路でも使ってくれなければ意味がない。
・・・・・・・でも良く考えてみれば、庶民感覚のない政治家のこれまでの数々の言動を省みれば
予想出来ない・・・ことも無理もなく、至極当然なのかもしれない・・・・と思えてきた。
この新聞で、有料道路研究センターの緒方代表は
「道路を作るという目的が先にあり、つじつまのあう数字をただはじき出しているだけ・・・!。」
という指摘に、私は思わず「そうだ!・・そうだ!・・」と、大きくうなずきたくなった。
「費用対効果」という意味で、別の側面から、この「本四架橋」によって、1人当たり県民所得や
県内総生産の伸びは全国を上回ったではないか!・・・という主張も見つけたが
だが、例え・・・たとえ、結果その税収で「本四架橋」が維持できるのだとしても、それは
建設当初から「不採算道路」であっても必要な道路なのだと、そのビジョンを示し
国民に理解されるものでなければ・・・・それは結果論に過ぎない。
国交省は、遅かりしも4月に「道路の将来交通需要推計に関する検討会」を立ち上げたという。
この度の「一般財源化」を受けて、生活のため車に乗らざるを得ないひとたちから
「自分の車から納めた税金が道路でなく、なぜ税金を納めていない人たちのために使われるのか?」
といった不満も受けながらも、・・「金があるから使う」・・・という構図を変えるには
私は、やはり一般財源化しかないのかもしれない・・・などと真剣に考えてみた。
ただ、今度はその一般財源を巡って又も族議員による“かね”取り合戦が始まるのだろうか?
この国の道路が「道路を作るという目的が先にあり・・」ではいけないのだと・・声高にしても
今のビジョンの無い・・示さない政治家たちでは決して変わりそうにない・・・・と思うとき、
いっそのこと、民主党の言う全ての「高速自動車道」を無料にし、そうすれば物価は下がり
観光地も少しは潤うのではないか・・などと、大胆で危険なことも想像したくもなる。