玉川寺 “睡蓮” |
鶴岡市羽黒町にある「玉川寺」(ぎょくせんじ)を訪れた。
私は、この「玉川寺」には何度か訪れているが、その庭の表情は、季節や天候や時間によって印象が異なり、何時も新鮮な感動を体験している。
この「玉川寺」は、今から約7百年ほど前の鎌倉時代(1251年)に開かれた曹洞宗の寺院で
玉川寺庭園は1450年代に作庭され、1650年代の改修を経て今に伝えられているという。
大きな池を中心とした“池泉廻遊式蓬莱庭園”と呼び、1987年には国の文化財名勝に指定された。
私たちは、駐車場で車を降り、直ぐ近くの「山門」をくぐり、本堂を正面に見て、美しい石たたみ
の上をゆっくり歩きながら庭園入り口に向かった。
受付で300円の入園券を買い求め、靴を脱ぎ、早速庭園を正面から見ることの出来る書院に向かった。
冒頭の写真のように、取り外された建具のない敷居と鴨居と柱が額縁となって、この庭園の風景が
美しく切り取られ、綺麗に手入れされた数々の樹木の見事な構図を見せてくれた。
私は、その書院の畳にあぐらをかき、池を真ん中にし、暫くその奥行きと深みある庭園を見つめた。
そういえば、自然の山から流れ落ちる・・・という、その滝が何処にあったのだったか?・・・
と思わせるほどに全く滝の様子は伺えないことに気が付いた。
確か、何時もは正面にその滝が見えるはずなのだが、水に恵まれないためなのだろう。
私は来園者用に置かれたサンダルを履き、書院の縁側を出てその蓬莱庭園を廻遊してみた。
時々池の鯉がジャンプして見せ、私を驚かしてくれる。
そして、池のほとりをよく見れば、白とピンクの二つの小さな睡蓮が目に入った。
水面に浮かぶ睡蓮の葉に囲まれながら美しく咲くこの睡蓮・・・・。
私は、その場にしゃがみこみ、あのフランスの画家「モネ」の描き続けた睡蓮を思い出しながら
久しぶりに出会ったこの睡蓮を暫くの間見つめていた。
葉も花も、水面から立ち上がる「蓮」も美しいが、どちらも水面に浮かんだままのその睡蓮のこの姿の、なんとしとやかなことだろうか、私は周りの樹に目を奪われ、この二つの睡蓮をつい見過ごしてしまうところだった。
近くに咲いていた紫色のアヤメの花と一緒に、緑一色のこの庭園に・・まさしく色を添えてくれた。
私は思い出したように、ふっと・・・お袋の姿を覗いて見たら、その小さくなった体を書院の畳に吸い取られるようにしゃがみこみ、その視線を庭園のどこかに焦点をあわせ・・・
何故かじぃ~・・っとその一点を見つめていた。