ピアニスト “辻井伸行” さん |
ある記者が「もし・・目が見えたら何が見たいですか?」と質問した。私は、なんと言う酷な質問をするのだろう・・と思うも、「はい、もし一度だけ目が開くなら・・・やっぱり両親の顔が見たいです!。」と、彼は笑顔で答えていた。・・・・それは、先日、米国で開かれた第13回バン・クライバーン国際ピアノコンクールで日本人として初めて優勝した盲目のピアニスト“辻井伸行”さんの記者会見での言葉だ。
私が酷だ・・などと、案じていたことなど彼はとうの昔に・・いや、生まれた時からかもしれないが、そんな後ろ向きな負の“こころ“などは待ちあわせてはいなかった。両親は当然のごとく「生まれてよかったと思ってくれようか」と悩んだというが、音楽だけではなく、美術館にも積極的に連れて行ったのだという。そして、その芸術の美しさの、色や形、その様子を言葉で語って聞かせた・・というのだ。だからこそ彼は、音の"音色"・・という色が見えたのかもしれない。両親の不安や苦悩や、「出来ない」体で生まれながら「出来る」ことだけを見詰めてきた本人の“こころ“のどれほどの強さなのか・・どれほどの努力だったのか・・など、幸運にもどこにも障害のない体で生まれた私などには理解できるはずも無いが、「花火に行っても、”こころ“の中で色とりどりの花火が開く。母のおかげで、何でも心の目で見られるようになった。不自由はありません。」と、笑顔でそう答えた彼の、何と明るく伸びやかな”こころ“なのだろうか・・と、私は”こころ“の透明な美しさを感じ感動していた。
中国人男性とともに2人が1位となった彼は現在二十歳で、コンクールでは、ショパンなどの曲目をこなし、「神業」と評価を得たのだそうだ。弦楽四重奏との演奏では、頭を振って息を合わせ、最終日の演奏が終わると、客席から何度も「ブラボー」の歓声がわき起こったという。そして、彼が尊敬するという”バン・クライバーン氏”は、トロフィーを渡しながら受け取る彼を思わず両手で強く抱きしめた。
譜面や指先を見ることが出来ない・・というハンディーを持ちながら、見事に弾きこなしてみせる彼の師は、「その驚きよりも、音楽の感動を伝えるために彼は勉強を重ねてきのだ。」と語る。昨日、終始この快挙を伝えるテレビを見ていた私は、“盲目の”・・などという、そんな形容詞の要らない見事なピアニストに育てあげたお母様の、「私に生まれてきてありがとう。」と、一瞬涙した姿を見た。
(上の写真は、彼が二歳三ヶ月のころ、おもちゃのピアノに触れている姿。今日の朝日新聞より)
ピアニスト“辻井伸行”氏の好きなカラオケでは、決まって氷川きよしの「ズンドコ節」だというから、
・・・一度聞いてみたくなった。