『井上雄彦・最後のマンガ展』・・最終重版・“仙台版“ |
この度、「せんだいメディアテーク」を会場にして催された、『井上雄彦・最後のマンガ展』(最終重版・仙台版)。会場入口の、壮大な真っ白な壁には、「井上雄彦」自身が、脚立によじ登り毛筆で描かれたという、巨大な絵が目に飛び込み、その迫力に圧倒される。それは、彼独特の筆のタッチとその力強いスピード感・・、まさに、彼の画力を目の当りにする壁画だった。そして今回は、彼の数々のヒット作の中で、宮本武蔵を題材にした『バガボンド』の原画などが、展示方法にも工夫を凝らし、よりいっそう魅力的に展示されていた。その会場となった展示場には、平日にも関わらず、人気の漫画家だけあって、特に男女問わず若い人たちで大いに賑わっていた。(画は全て図録より。)
迫力ある原画の中で、特に、墨の濃淡を駆使し、和紙に毛筆で描かれた原画は、その一枚をもってしても、見事な“絵画”として完成している。特に、セリフに頼らなずに、画力で観る者に強く伝えようとするその“コマ”作りは、むしろ映画監督や演出家の力量にも似ている。
彼は、“漫画の先人が作り上げてきた「マンガ的な手法」や、「マンガ的記号」を、『バガボンド』では極力使わないようにした・・・。”という、その意味が、観る者に明らかに新鮮な香りとなって伝わってくる。更に彼は、逆に『リアル』ではそれらを最大限に発揮して描いているのだ・・。」とも語っている。
漫画『AKIRA』の「大友克洋」が、細部に渡り描きあげるその描写力が、あの「フェルメール」だとするならば、この「井上 雄彦」を、私は、素早い筆のタッチで見事にその質感や光を表現して見せた、“画家の中の画家”と呼ばれた、あの「ベラスケス」と呼びたい!。
マンガ界でその画力を発揮し、観る者をひきつけてやまない漫画家・「井上雄彦」。彼は、「最終的にはただの絵描きになりたい・・。」とも語っているのだから、何時しか彼が“絵描き”になり、その一枚のキャンバス(和紙?)に完成せたその“絵”の前に、私は、何時か是非立ってみたい・・・と思った。
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山形美術館 『林 清一 展』
東北三県紀行① 「水木しげる」と“漫画館”