あぁ~・面白かった!・・劇団 I.Q150 《東仙台物語》 |
東仙台でコロッケ屋を営む「中原家」の肝っ玉母さん”梅子”と三人の・・娘?。長女は銀行員、三女はまだ高校生、それに、次女と一緒にリサイクルショップを営む三人の従業員は、この「中原家」で生活を共にしているようだ。だが、父親の姿は見えない。舞台は、三女がお寺の境内から気を失った一人の男性を、犬や猫のように拾ってくる・(助けようと)・ところから始まる。中盤に差し掛かり、父親が一人の娘を連れて12年ぶりに帰ってくることから、あの三人の娘は、父親が外で次々と女を作っては、その度に連れ帰った娘たちだったことがわかるのだ。そこに、突然現れる長女の彼氏。そんな人たちが、いつの間にかこの「中原家」で生活を共にするようになる。
(左はチラシより。)
”ものがたり”は、次々と訪れるそんな”ひと”と”ひと”との関わりの中で、泣いたり笑ったり、怒ったり喜んだりと、リズムの良いテンポと絶妙な”間”といった流れの中で、一人一人の”人間味”が重なり合う。そして、ところどころに見せる、繰り返される”ことば”や、さりげなく演出された強調される”からだ”の動きは、とても効果的だ。それに、何といっても、観客を楽しませようとするその力量は、アマチュア劇団の枠を越えている。そして、芝居のラスト数分間で見せた、家族となった大勢の食卓シーンは見事だ。セリフではない、ひたすら重なり合う家族たちの”ことば”と、ひたすら動き回るその様が、今では目にしなくなった、ほのぼのとした温かい大家族の賑わいを見事に表現して見せた。その光景を目の当りにし、決して悲しいシーンではないはずか、私は、なぜか涙がこみ上げてきた。それは、私の中にあった、忘れかけていた大事な”もの”を、この芝居によって取り戻すことが出来たその瞬間の感動だったのかも知れない。
舞台に引きつけられたあっという間の2時間40分、でも、一点だけ気になるところがあった。「どうしようもない父親の、その他人の娘を何故次々に家族に出きるのだ!」と、母親が娘達に問い詰められるシーンだ。この芝居のテーマでもある、母親の、内に持つかっこたる”生きること”への確信を、いや、無条件な寛容さ・・でも良い、娘達に・・、そして観客に、もっと明確に伝えることができなかっただろうか。もしかするとそれは、軽いセリフ・(言葉)・よりは、この会場だからこそ表情や仕草でもよかったのかもしれない。・・でも、この芝居には、そんなことをも打ち消してしまうだけの圧倒的なパワーがあった。
30.000人を超える無縁死(孤独死)、それに自殺者が30.000人を超えるこの国日本。ここ数年、「誰でもよかった」と言っては無差別に”ひと”を殺したり、それに、家族が家族を殺す・・というニュースも珍しくはなくなった。そんな世間を横目に、この芝居は、”お金”が無くとも・・”地位”が無くとも・・どんなに辛くとも、そして例え”他人”でも、人と人とが家族のように向き合ってさえいれば、しっかりと生きていけるのだ・・ということを教えてくれる。
貧乏ながらも、どんな”ひと”でも次々と家族以上に受け入れていく母親”梅子”。そんな母親らしい身のこなしで終始芝居を引き締め、そして作者でもあり演出でもある、「劇団 I.Q150」の代表「丹野久美子」氏に、私は目を見張った。
劇団 I.Q150 《東仙台物語》は、昨日(11日)と、今日12日(土)の11時と16時、明日13日(日)の11時と16時の、合わせて6回公演される。たまに、生きる”チカラ”が溢れる”昭和の香り”を全身で味わってみるのも良いかもしれません。会場は、仙台市青葉区春日町6-1白鳥ビル8階。
劇団 I.Q150 《東仙台物語》・・・あぁ~・面白かった!