梅菓子店 「松野屋」 いよいよ開店準備 |
「青木さん、何時この写真撮ったんですか?・・・」とは、この現場の職人さん。
私・・「あのぅ~・・これ写真じゃないんだけどぉ~・・!」
この職人さん、現場が完成していないのだから写真は撮れないことに
何故か一瞬・・・気が付かなかったようだ(笑)。
これは、私がかねてより設計そして監理中だった、東根のあの梅一個丸ごとお菓子に変えてしまった
梅菓子店「松野屋」様の外観なのだ。
つまり、これはパソコンのソフトを駆使して作ったその完成予想図だったのだ。
屋根や左右両側の白い外壁が、木製看板を雨から守るように正面に迫り出している。
そしてベージュの外壁には珪藻土を使い、横に目地のように見える部分は
ボーダータイルを利用しそれをちょっとだけずらしながら貼った。
透明なフロントガラスは、厚さ12ミリ巾2.3メートル高さ5メートルの両側とも1枚ガラス。
平屋でありながら、2階の高さまで吹き抜けとしたために、ダイナミックなお店の正面
として表現する事が出来た。
そしてこの正面玄関の上に掲げる予定の木製看板。
先日、その貴重な欅材を提供していただいた、私のお客様でもある“東だんご”の社長さん
そして大工さん、それにオーナーも一緒にその欅の板を引き割ってもらうため
ある“製材所”に出向いたのでした。
人工的な集成材や化学製品の建築材料が多くなった昨今
この様々な木が丸太のままうず高く積み上げられ、そして木の香り漂うその製材所は
どこか懐かしさと新鮮ささえ感じさせる。
お店の顔になるこの看板には、どんな木目を出せばいいのか、そしてどの部分を切り取ればいいのか。
この面白い曲線を生かし、文字の大きさも考えながら私とオーナーの意見が一致、ようやく看板となる部分が決定した。
厚さ9センチ、巾は70センチ以上、しかも3mを越す長さのこの見事な欅材の貴重さを考えると
間違ってはならないという、最近ではなかなか味わえない緊張感溢れる瞬間だった。
そして、鋭い刃が高速で回転してこの分厚い欅の板をゆっくり引き割って行く・・
どの角度に刃を合わせれば無駄なく引き割れるのか・・・その職人の技も光った。
それとは別に、この「松野屋」のオーナーが自分で芽から育て上げたという
これも貴重なストックされていた何本かの「桐」の木を、「是非お店に生かしたい」
という希望に、私は設計でこたえなければならなかった。
箪笥に使われる一見軽くて柔らかな、そしていかにも弱そうなその「桐」材だが
目は欅に似てとても美しく、意外にもとても弾力があり強い木材であることに驚きながら
私は、24センチ角のこの桐材を、お店を支える数本の柱や化粧の梁として
出来るだけ加工せずにそのまま使用することにした。
残りの板材は要所に化粧の壁材として使用した。
(この紙で包まれている太い柱が桐材)
この完成予想図(店内)のように、桐の肌が塗装により見事に浮き上がる事を社長共々
とても楽しみにしている。
今年、暖冬だったせいなのか「梅」が不作で頭を抱えるオーナーだが
後日、包装台やレジ台や菓子ケースなどの家具も運ばれる。
私とオーナーは勿論、“技”を発揮してくれた大工さんや多くの職人さんの
熱い思いがいっぱい詰まった
「さくらんぼ東根駅」近くにあるこのお店が
いよいよ開店準備に入った。