福島紀行① “野口英世記念館” |
一泊二日の旅行と決め出かけた。
そして、予想も出来なかった様々な感動がたくさんあった。
猪苗代湖近くにある茅葺屋根の生家のあるあの「野口英世記念館」。
その外観は何度か見ていたのだが、改めて「野口英世」の世界に触れてみようと
まずはこの記念館の門をくぐった。

わたくしもよろこんでをりまする。なかた(中田)のかんのんさまに。さまに(重複)ねん(毎年)。
よこもり(夜籠もり)を。いたしました。べん京(勉強)なぼでも。きりがない。いぼし(烏帽子)。
ほわこまりをりますか。おまいか。きたならば。もしわけ(申し訳)がてきましょ。
はるになるト。みなほカいド(北海道)。いてしまいます。わたしも。こころぼそくありまする。
ドかはやく。きてくだされ。かねを。もろた。こトたれにもきかせません。
それわきかせるト。みなのれて(飲まれて)。しまいます。
はやくきてくだされ。はやくきてくだされ。
はやくきてくだされ。はやくきてくだされ。
いしよ(一生)のたのみて。ありまする。にしさ(西)むいてわ。おがみ(拝み)。
ひがしさむいてわおかみ。しております。きたさむいてわおかみおります。
みなみたむいてわおかんております。ついたち(一日)にわしおたち(塩断ち)をしております。
ゑ少さま(栄昌様)に。ついたちにわおかんておりまする。
なにおわすれても。これわすれません。さしん(写真)おみるト。いただいております。
はやくきてくだされ。
いつくるトおせて(教えて)くたされ。これのへんち(返事)ち(重複)まちておりまする。
ねてもねむられません
(「野口英世記念館」ガイドブックより)
野口英世の母「シカ」は、幼いころ習った字を思い出しながら一生懸命練習して
息子「英世」へのこの手紙を完成させたのだそうだ。
その解説付の手紙を読んでいたら、字はねじ曲がって、いちいち(、)ではなくて(。)だったり
(と)が(ト)だったりと、とてもたどたどしい文章・・・・だからこそ
年老いた母シカの、息子英世への深い思いがとても強く伝わってきて胸が熱くなった。
(手紙は何度か書いたらしいのだか、残っているのはこの一通だけなのだそうだ。)


(写真は、英世の生家のまさしくその囲炉裏。)

この記念館の二階に上がると、野口英世の生涯を映画化された「遠い落日」がビデオで紹介されていた。
私はこの映画はまだ観ていないが、最近、又息子の事でマスコミから追い掛け回されている「三田佳子」が母親役で、ちょうどあの悲惨な囲炉裏の場面が放映されていた。
その臨場感溢れる演技によって、この袋で隠された左手の惨すぎるほどの痛々しさが伝わってきた。
それにしても、三回もノーベル賞候補となりながら、しかも自分の研究テーマである「黄熱病」によって51歳にして命を奪われるという・・・いかにも残念だ。
母「シカ」との溢れる愛情の余韻を味わいながら、私はこの記念館を後にし
寒さにジャンパーの襟を立てながら筋向いにある「ガラス館」に向かった。

以前からとても気になっていた、風雨から守るためなのだろう押しつぶされそうなこの覆いかぶさる重々しい屋根。
「細い鉄骨を組み合わせたアーチ状の屋根だったら?・・・それとも、構造体を軽やかなトラス構造にして
屋根を透明なガラスにしてはどうか?・・・」
もっと軽やかに、英世の生家が浮かび上がるようなデザインが出来なかったものか。
この記念館をじっと見つめながら、私が設計するなら・・・などと、予算を度外視にして
勝手にデザインをイメージしていた。
この日、会場は平日のこの季節にもかかわらず大勢の観光客で賑わっていた。