“上棟式”と“五円玉” |
真冬の上棟式は珍しくは無いが、予測が難しい天候だけには従わなければならないので
それなりの覚悟は当然必要なわけではあるが。
「上棟式」は通称「建前」(タテマエ)とも呼び、無事棟が上がったことに喜び感謝するもので
「儀式」というよりは施主が職人さんをもてなす「お祝い」と言う意味合いが強い。
工事に関わった人が一同に会し、今後の工事の安全を合わせて祈願する。
この日も無事その式が終了し、屋根に上って餅まきの準備に入った。
幸い青空とまでは行かないまでも天候に恵まれ、屋根に上れば遠くの美しい「鳥海山」も
見ることが出来た。
ご近所には事前にお知らせしているものの、餅まきの時間になると子供たちも含め
どこからともなく沢山の人達が集まりだした。
何度体験してもこの餅まきは、日本の麗しい文化を体で感じる瞬間だ。
私は、この上棟式で撒かれる五円玉を、事務所を設立してからずっと使わず大切に保存してきた。
中には、その上棟式を行わなかった建築もあるが、この赤い唐辛子の左に下がっているのが、私がこれまで数十棟はあるだろうか、その全ての上棟式でいただいた五円玉の集積なのだ。
一棟に一個という訳ではないが、下から順に積みあがった五円玉のこの凄まじい数は、お客様の思いのこもった仕事の結晶とも言える。
この写真は、太い“ハリガネ”に通したその五円玉の束。
先日の上棟式でいただいた三枚の五円玉でちょうどいっぱいになってしまった。
その長さは60センチほど、新しい上の部分から下に行くほど色が濃くなっていて、その年月の長さにいまさらながら驚いている。
さて、銀行に持っていこうか・・・それともプレミアムの付いた年代物もありそうだから・・・
などと思いながら・・・でも、自分の仕事の足跡を目に見える形で飾っておくのには一番いい方法だと思うので、やはりこのまま今までと同じようにこの私の仕事場の見えるところに大切に保管しておこうと決めた。
そして又、同じ長さの新たなハリガネを準備し、これからどれだけの上棟式を体験できるのか
初心に帰ったつもりで又積み重ねていこうと決めた。
私にとっては、先日の上棟式はそんな小さな節目を迎えた日でもあった。
これまでの全てのお客様に・・感謝・・・感謝です。