"エスパル山形" 1Fリニューアル工事 |
これまでのテナントの位置も変わり、他店と同時に今年三月に新装工事に入る。
先日、「ホテルメトロポリタン山形」にて「仙台ターミナルビル㈱」からの合同説明会があった。
近年、古くなったイメージや景気の低迷、観光客の減少などにより、当初と比較すると
扱う商品の違いはあるものの、その店舗を選ばず売り上げが落ち込んでいた。
そのため、新たなコンセプトを元に、十数年ぶりにこの山形の名品名産を販売する1階のフロアーを
全面改装するというものだった。
当然、山形の“顔”となるスペースだけに、いろいろなイメージの統一を図りながら
各店の新しさと個性を出すという事になる。
このフロアーの約1/3を占めていたゲームセンターと入れ替わるというものだった。
(図面の右1/3の部分。下が駅正面。)
駐車場を必要としない客層に狙いを定めた「マツモトキヨシ」の勝算は分からないが
これまで駅ビルの正面をゲームセンターが占拠していたわけだから
山形駅ビルの顔やその印象も少しはイメージの良い方向に変わるのかも知れない。
さて、私が設計することになる“お菓子の「杵屋本店」”が、どのようなお店にすれば良いのか?
そのイメージの提出期限もせまり、社長やスタッフと共に議論を重ね
先日、結論を出さなければならない期限となった。
同じフロアーに、競合店と肩を並べてお店を構えなければならないその条件を承知の上で
「杵屋本店」というオリジナルなイメージを表現しなければならない。
新しさと、最低必要な機能性(菓子箱のかなりのストック)に頭を抱え
スケッチを繰り返しながら、ふと・・・一つの方法にたどり着き、そのイメージが浮かんだ。
奥行きの無いこのスペースで、ストック出来るスペースを確保しようとすると
どうしても正面の壁が収納の扉で埋めつくされてしまう。
かつては、そのつり棚の表面の色や質感だけで店のイメージを作ってきたこともあつた。
そこで、厳守しなければならないその機能を逆手にとって、正面の壁の全てを
これまで以上の収納力のある吊り棚にして、その正面の扉全体を「光る格子の壁」
にしてしまおうという案なのだ。
つまりつり棚の扉を、格子の裏に光を通す和紙調のアクリルをはめ込み
ストックする箱とその扉の隙間を利用して、上部から照明器具によって光りを落とし
まさしく収納を意識させない“光の格子の壁”にしようと言う案なのだ。
更に、創業1811年の杵屋さんですから、その老舗というイメージ作りのためには
多くのデコレーションによる小細工は必要なく、かえってこの欅の看板のたった1枚で
表現することで、老舗というイメージは際立つはずだと。
早速先日、劇団で培った大工の技術を駆使し、原寸大の模型にてその照明の効果を確認した。
私のこの案に、勿論社長初め杵屋のスタッフも賛同していただいた。
逆に格子というシンプルだがモダンなイメージが、かえってお客様への印象の強い
“店の顔”が出来上がるはずだ・・・と思っている。
今回のお店に限らず、住宅も含め・・その期限に追われながら頭をかきむしるのは珍しくは無い。
そして、崖っぷちに立たされながら、ようやく自分のデザインに自らが納得し
その完成の姿が見えたとき、言葉にならない充実感のような
不思議な感覚に満たされるものだ。
例えばそれは、登山においては素人の私が、以前嘔吐しながらも友人と共に大朝日の山頂に
ようやくたどり着いた時のあの爽快感に似ていて、その山頂だから見える自分の足跡を
充実感を持って眺めている姿にとても似ていた。
プランの段階で、この私のブログによって手の内を明かすことになるのだろうが
私はそんなことにはなんの興味も無く、今次の仕事に向き合っている。