“清徳丸” の 「浦じまい」 |
海上自衛隊のイージス艦「あたご」が、マグロはえ縄漁船「清徳丸」に衝突した事故で、行方不明になっている、吉清治夫さん(58)と長男哲大(てつひろ)さん(23)親子の漁船による捜索は、「仲間にこれ以上迷惑を掛けられない」との親族らの強い要望で25日未明打ち切られた。
沈没した「清徳丸」が所属する新勝浦市漁協川津支所や周辺漁協などの、一時は60艘の仲間の漁船が自ら捜索に向かったこともあった。
漁船などの船に関して何も知らない私は、捜索に向かうその一艘の漁船に掛かる費用が、一回10万円もの燃料代が掛かっていた・・・ということを知った。
つまり、10日間続ければそれだけで100万円・・という事になってしまう。
仲間の漁船は勿論それを承知で、漁を休み自費で操作に向かうという、勿論金額ではないが、海の男たちのその“絆”の深さに胸をうたれた。
イージス艦が同じ海の男として、その何分の一だけの“こころ”を持ち合わせていたならば
こんな無残な事故は起きなかっただろうと思うと、漁船の仲間の虚しさが
よりいっそう伝わってくる。
海に二人を残したままのやりきれない家族の思い。
私は、その気持ちに区切りをつけるという意味で行われた「浦じまい」という漁師町の儀式があることも知った。
25日、仲間の漁船で千葉県勝浦市の川津港を出発、海上から花束や酒、千羽鶴などを投げ入れる姿、目に見えない"なにか"に、必死で届けようとするその“こころ”が痛々しい。
「浦じまい」の終わりに親族らが二人の好きな飲み物や塩などを海にまき手をあわせた。
それにしてもこの ”うらじまい” という言葉の響きのなんと虚しいことだろうか。
そしてこの儀式が生まれるほどに、これまでどれだけの人達が海に
残されてしまったのだろうかと・・・そう思うと胸が熱くなる。
26日は悪天候で出漁する船はほとんどなかったが、漁師の多くは
「まだ漁に行く気になれない」 と、「浦じまい」が終わった後も、やり切れない思いを漏らしていたという。
27日午後、イージス艦「あたご」の船渡健艦長(右)と、吉川栄治海上幕僚長(左)が、吉清さんの自宅を訪れ・・・・そして遅かった謝罪。
今後は、海洋調査船「かいよう」が捜索を続けるというが・・・。